オムニバスの「職場の作法」は、OL目線での職場の日常が淡々と描かれています。そしてそれがごく普通の事務員をしていたことがある私には共感できる事が多く、そうそう、あったあったー、と思いながら読みました。
本のタイトルになっている「とにかくうちに帰ります」は、嵐になった事で早帰りになった会社員達がメインの話ですが、嵐の描写が多く、読み始めはちょっとあきてしまいました。でも途中からの展開は、それまでのエピソードが一つにまとまってきて、「え?こうつながるの?」というちょっとした驚きと共に、そのつながりがどう収まるのか、結末が気になって読む速度が一気に上がりました。「袖振り合うも他生の縁」という言葉が頭に浮かびました。登場人物が嵐の大変さの中、ちょっとづつ親切で、嵐は大変だったけれど、とりあえずよかったわね。読んだ後そう思えるお話でした。嵐の描写がもう少し簡潔で全体のページ数が少なかった方がすっきりしたような気がします。
でも普通に面白く読めました。
とにかくうちに帰ります (新潮文庫) 津村記久子
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